前編では、読み返す、ノートにまとめる、線を引くといった「やった感はあるのに効果が低い」勉強法を取り上げました。後編では、本書で「効果が高い」とされている勉強法を見ていきます。軸になるのは、アクティブリコールと分散学習の2つです。
1. アクティブリコール:「思い出す」練習をする
アクティブリコール(Active recall)とは、学んだことを、何も見ずに頭の中から引っぱり出す練習のことです。本書では、学習にとって決定的に重要な方法として紹介されています。
たとえば、教科書を1ページ読んだら本を閉じて、覚えていることを書き出してみる。単語カードの表だけを見て、意味を言ってみる。どちらも立派なアクティブリコールです。
本書でも紹介されている、有名な実験があります。2006年に行われたこの研究では、大学生に文章を読んでもらい、「もう一度読む」グループと「思い出して書き出す」グループに分けました。5分後のテストでは読み直したグループのほうが点数が高かったのですが、2日後と1週間後には、思い出す練習をしたグループのほうがよく覚えていたのです。
その場の手応えと、長く残る記憶は別物だということです。思い出そうとして苦労する、その「しんどさ」こそが記憶を強くしてくれます。
2. 分散学習:時間をあけて繰り返す
2つ目は、分散学習(間隔反復)です。同じ時間勉強するなら、一気にまとめてやるより、間隔をあけて何回かに分けたほうが記憶に残りやすいことがわかっています。
一夜漬けで覚えたことは、試験が終わればあっという間に忘れてしまいます。翌日、数日後、1週間後と、忘れかけたころにもう一度思い出すほうが効果的です。語学なら、Anki のような間隔反復アプリを使えば、復習のタイミングを自動で管理してくれます。
3. 2つを組み合わせる:連続的再学習
本書では、アクティブリコールと分散学習を組み合わせた「連続的再学習」という方法も紹介されています。思い出す練習を正解できるまで続け、それを日をあけて何度か繰り返すやり方です。
一度正解できたらおしまい、ではなく、日をあけてもう一度試してみる。シンプルですが、かなり強力です。
ほかにも使える3つの方法
本書では、ほかにも次のような方法が紹介されています。
- インターリービング:種類の違う問題を混ぜて練習する。文法なら、同じ項目ばかり解くのではなく、いくつかの項目が混ざった問題に取り組む。
- 自己説明:学んだことを自分の言葉で説明してみる。人に教えるつもりで話すと、自分がわかっていないところが見えてくる。
- 精緻的質問:「どうしてそうなるんだろう?」と自分に問いかける。理由とセットで覚えると、知識同士がつながりやすくなる。
語学の勉強で、今日からできること
- 単語帳は「眺める」のではなく、答えを隠して「思い出す」
- 読んだ記事の内容を、何も見ずに英語で3文にまとめてみる
- 間違えた単語や表現は、翌日・3日後・1週間後にもう一度テストする
- 覚えた文法を、友だちや AI に説明するつもりで書いてみる
効果の高い勉強は、ちょっとしんどい
効果の高い勉強法には共通点があります。その場では少し大変で、「できていないな」と感じやすいことです。読み返すほうがずっと楽ですし、気分もいい。でも、思い出そうとして言葉に詰まるその瞬間こそ、脳がいちばん働いているときなのです。
安川さん自身も本の中で、もともと記憶力に自信があったわけではないと語っています。だからこそ、才能ではなくやり方で結果は変えられる、という本書のメッセージには説得力があります。
勉強時間を増やす前に、まずは勉強のやり方を見直してみませんか。
無理なく続けられる暮らしをつくるための、エッセイと音声と絵。東京にて。