教科書を何度も読み返したし、ノートもきれいにまとめた。大事なところには蛍光ペンも引いた。なのに、テスト本番では思い出せない。そんな経験、ありませんか。
アメリカで内科・感染症の専門医として活躍する安川康介さんの著書『科学的根拠に基づく最高の勉強法』によると、私たちが当たり前のように続けてきた勉強法の多くは、実はそれほど効果が高くないそうです。この本では、学習に関するさまざまな研究をもとに、効果の低い勉強法と高い勉強法が紹介されています。
前編では、まず「効果が低い」とされる3つの方法を取り上げます。
1. 何度も読み返す(再読)
おそらく、いちばんなじみのある勉強法でしょう。本書でも、アメリカのある大学では8割以上の学生が試験対策として再読をしていた、という調査が紹介されています。
ところが、ただ読み返すだけでは、ほかの方法に比べて記憶に残りにくいことがわかっています。
落とし穴は、読み返すうちに内容が見慣れたものになることです。見覚えがあると、なんとなく「もうわかった」「覚えた」という気になってしまいます。でも、見て「知っている」と思えることと、何も見ずに「思い出せる」ことは、まったくの別物です。
2. ノートに書き写す・まとめる
きれいなノートができあがると、それだけで勉強した気分になりますよね。ただ、教科書をそのまま書き写したり、色ペンで見た目を整えたりしているとき、手は動いていても、頭はあまり働いていないことが多いのです。
時間がかかるわりに、記憶にはそれほど残らない。ノート作りそのものが目的になってしまうと、かけた労力に見合う成果は得られません。
3. 蛍光ペンで線を引く
線を引くのは手軽ですし、ちょっとした達成感もあります。けれども、線を引くこと自体が、記憶を強くしてくれるわけではありません。
しかも、あれもこれもと線を引いているうちにページ全体がカラフルになり、本当に大事なところがどこなのか、かえってわからなくなってしまいます。
どうして効果の低い方法を選んでしまうのか
3つに共通しているのは、「楽なのに、やった感がある」ということです。読む、写す、線を引く。どれも頭にそれほど負担をかけずにできるので、勉強している手応えを得やすいのです。
ただ、記憶に残るかどうかは、その手応えとは別の話です。むしろ、ちょっと苦しいくらい頭を使ったことのほうが、長く覚えていられます。
語学の勉強でいうと
英語や日本語の勉強でも、同じことが起きています。
- 単語帳を眺めて「この単語、知ってる」と確認するだけ → 再読
- 新しい単語をノートに10回ずつ書く → 書き写し
- 教科書の例文にマーカーを引く → ハイライト
どれも無駄ではありませんが、それだけでは「使える知識」にはなかなかなりません。
「やめる」のではなく「足す」
とはいえ、こうした方法をすべてやめる必要はない、と私は思っています。最初に全体像をつかむために一度読む、あとで見直したいところに印をつける。そんな使い方なら、十分に役立ちます。
大事なのは、そこで終わりにしないこと。では、何を足せばいいのでしょうか。後編では、本書で「効果が高い」とされている勉強法を紹介します。
無理なく続けられる暮らしをつくるための、エッセイと音声と絵。東京にて。